トーストとミルクコーヒーの朝飯に

新聞は欠かせない。紙面に落ちるパンくずを払いながら、隅から隅まで読むのが朝の楽しみである。あんまり興味のない記事は文字の上を視線がすべっていくけれど、何となく頭の片隅には残っているようで、後日関連する記事を読んだ時にはおぼろげな記憶がよみがえる。曜日ごとに楽しみにしている記事もあり、もちろん運勢欄は最後に取っておく。

「人間は皆エゴイストである」という書き出しで始まる新美南吉の日記が、昨日の文化面のコラムに取り上げられていた。どんなに立派な人であっても、腹の奥底にはエゴがある。皆がそれを自覚したら世の中はどんなに良くなるだろうという趣旨であるらしい。

後ろめたさからくる優しさには、あまりプラスのイメージはないけれど、自分の未熟さを補うためにいい事をするって考えれば印象も変わる。少なくとも独善的にはならないしね。

正義や善意にはずみがつきすぎて、事態が思惑と正反対の方向に転がり出したり、かえって遺恨を残す結果になってしまったり、苦い経験を持つ人も多いんでないか。

毎日の出来事に心が痛んだり、ふざけんなと憤ったり、思わず振り上げた拳をそっと包んで下ろしてくれるのは、心に残る古い後悔だったりする。気持ちはわかるがバカはするなよ、と昔の自分が気まずげに笑う。