小さい秋を見つけたいけど

まだ蒸し暑い昼間はそんな気配も感じられない。ただいつの間にか蝉の声は聞こえなくなったし、夕方5時を過ぎるともう外は暗い。駅へ向かう道すがら、街路樹の銀杏の実が歩道に落ちて踏みつぶされている。

「お彼岸を過ぎて咲き出す彼岸花」なんて、どこかで聞いたような川柳をひねり出して悦に入っていたのはつい最近だが、その彼岸花も気がつけばしおれて見る影もない。

神社の秋祭りも終わったのにまだ半袖で過ごせるってどうなのよ。これでいきなり冬になったりしたら怒るよ。

10月も半ばをとうに過ぎ、今年も残すところ少なくなってきた。目下の懸案は実家じまいである。年内にはこちらへ移りたいと父は希望しているが、家じゅうにあふれた物をどう始末していいかわからないようだ。特に教師をしていた頃の書類や冊子類が物置一杯あるらしくて、子供の成績記録とか、もう大昔のだけど個人情報の点でアレかしら、普通にゴミに出してもいいんだろうか。

やはりいざとなると心情的に持ってきたい物が増えるらしく、でも今度の父の部屋は四畳半なので申し訳ないがほとんど希望には沿えないんである。押し入れダンスは無理ですよ押し入れないから。テレビはまあなんとかなるでしょう。日本人形は置き場所あるかなあ。お母さんのお雛様はだいじょぶ。なんて会話を電話のたびに繰り返している。

実際に部屋を見れば限度がわかるんだけどね。あいにく父はもうほとんど目が見えないので、言葉で納得してもらうしかないんである。50年住んだ家だからね、そりゃ離れるとなりゃ思うところはいろいろだろうなあ。