なにを血迷ったのか、プルーストの『失われた時を求めて』なんぞ

借りてしまった。毎晩寝る前に読んでいる。夜眠れないまま幼少期を回想するとこから始まるので、ベッドでの読書にぴったりだぜ。

作者の分身ともされる主人公はつれづれに、幼い頃母親のお休みのキスを心待ちにしていた事や、祖母や叔母たちのとりとめないおしゃべりや、副題にもなっているスワン氏の印象などを思い出す。思い出したら止まらない。既に一冊の四分の一ほど読み進めているけど、彼はまだ思い出し続けている。

全編この調子でいくとなれば、なるほど、読み通せない人が続出するのはわかる気がする。

似たような読書経験といえば、そうそう、『中二階』だわ、ニコルソン・ベイカーの。あれも、ひとりのビジネスマンがビルの入り口からエレベーターで中二階のオフィスに向かうだけの話であった。しかしその間にどんどん枝分かれしていく連想は、本文並の長文の注釈という形で読者を困惑させるのだ。牛乳パックのストローや靴紐について、あんなに豊かなイメージが広がるとは想定外の驚きであった。

ちょっと強引に結び付けてるきらいはあるものの、今の時点でのわたしの印象はそんな感じです。嫌いじゃない、むしろ好き。

光文社の古典新訳文庫版だからというのもあるだろう。訳文がすんなり頭に入って来て読みやすい。このシリーズのおかげで、かの『悪霊』も読破できたのである。さて今回は完走できるかな。