ふいに陽がかげって部屋が暗くなり、

ベランダの外へ目をやると、丁度真正面に黒い雲が大きく渦巻いていた。低い遠雷に気付いた途端、空を裂くように稲妻が走った。

突然の雷雨に注意と天気予報で言っていたから、来なさったなと見ていると、重たげな雲が細い線状に下へと伸びていった。これがゲリラ豪雨というやつか。「雨脚」とはよく言ったもので、激しい雨が大気中を整然と移動していく様子がはっきりと見える。

どうやらわたしの住むマンションも移動の通り道になっていたようで、少し遅れてざあっときた。降り注ぐ雨というより大規模な放水に近い状態である。向かいのビルの壁面が滝になっている。屋上からあふれた水ではなく、暴風で雨が真横から叩きつけられているのだ。

まるで高圧洗浄だな、さぞ外壁がきれいになる事だろうと感心していたが、あくまで自分は安全な室内にいるからそう思えるのであって、もし外出中であったなら、全身びしょぬれで激しく天を呪ったに違いない。

スペクタクルな見世物は15分ほどで終わり、再び日差しが戻ってくる中で雨だけがしばらく降り続けていた。

そういえば雨の降り出す前、鳩が何羽も空を旋回していた。さっさとどこかに避難すればいいのにと思っていたが、もしかすると強い風の渦に巻き込まれていたのかもしれない。鳩にとってはえらい災難である。

さて今日も雷雨注意報は出ているがどうかな。あんまり面白がると罰が当たって、通勤途中で見舞われるかもしれん。くわばらくわばら。