マルクス・アウレリウス『自省録』

夜、布団の中で読んでいる。理解できないところは深追いせずにただ読む。数ページ進んだら自然と瞼が重くなる。穏やかな気持ちで眠りに入れます。

聞くところによると、どうやら企業の経営者に愛読者が多いらしい。まあ書いたのがそもそも皇帝だからね、わからんでもない。

節度ある行動をせよ。感情に振り回されるな。お前はそんなに偉くないぞ。

これが人々の啓蒙のために書かれたものだったら、「そりゃ正論でございますがね」と毒のひとつも吐きたくなるが、膨大な量の覚書はあくまで彼が自分を戒めるためだった。まさか後世まで残って世界中で読まれるなんて、皇帝様でも気がつくめえよ。本人にしてみたら黒歴史かもしれないのにね。

そんな事を考えながら読む。

「もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないことだ。(第六章)」

誰かに不愉快な事を言われたかされたか、あるいはもっと大きな問題で、国同士の争いに関する事か。ともかく、ちくしょう仕返ししてやりてえ、と思った自分の気持ちを抑えようと、ぎりぎり歯噛みしながら書いたのかもしれない。

十二章からなるこの文章には、自身への励まし、戒めだけでなく、時には露わな感情も綴られる。五賢帝最後の一人と讃えられた彼でさえ、これだけの悩みや自己嫌悪と対峙していたのだな。

自制的であれ。なす事を見極めてそれをなせ。現代のわたしたちにも十分響く言葉である。

さてそれでは今わたしのなすべき事、買い出しへ行ってまいります。