土曜日の朝はNHK-FMの

ピーター・バラカンの番組を聴いている。語り口や選曲が落ち着いたトーンで耳に心地よいし、取り上げられる曲に1960年から70年のものが多いのも嬉しい。わたしは1965年生まれだからリアルタイムで聴いてはいないけれど、後から追いかける形で好きになったミュージシャンは、ほぼこの年代に活躍した人たちである。

ロックの黎明期、まだ音楽に様々な可能性があった時代だ。ビートルズを先陣に、次々と新たなジャンルや音楽理論が生み出されていった。挑戦と失敗を繰り返し、自分だけの表現方法を模索する彼らの音楽には、この時代ならではの輝かしさがあるような気がする。

近頃は未発表音源がデジタル化される事も増えて、お宝発見という感じのプログラムもよくある。過去の名演奏を振り返りながら語られるエピソードはどれも興味深い。わたしが好きなのは、ジョニ・ミッチェルのライブにジミ・ヘンドリクスが録音機材担いで現れた話である。小さなライブハウスだったかな。「僕あなたの大ファンです。録音してもいいですか」って可愛いな。ライブが終わったあとその録音を聴きながら、二人は一晩中語り合ったとか。

この年代の音楽とは別に、体にしみこんでいるともいえるのは1980年代のロックである。『ベスト・ヒットUSA』や『billboard TOP40』で情報仕入れてたからね。好き嫌い関係なく、この時代のヒットソングはほぼ全部覚えているし、どこかで耳にすれば問答無用で反応してしまう。

レコード屋で借りたLPを抱えて家に帰る。レコードに針を落としてから曲が始まるまでの数秒間、かすかに聞こえるブツブツというノイズ。ライナーノーツを読んで歌詞の対訳を追う。アルバム一枚噛み砕いて消化する熱意があったなあ。

そんな密度の濃い向き合い方は、音楽に限らず小説や他にも共通していたように思う。

若かったなあと遠い目になるね。縁側の年寄みたいに。