人混みが嫌いだ。

苦手という段階はとっくに通り越し、もはや憎んでいるというレベルである。

だから極力避けているのだが、たまによんどころない事情で出向かねばならない時は、見渡す限りの人の波を睨みながら「全員UFOに連れ去られちゃえばいいのに」と理不尽な怒りを抱いている。

「人混みが嫌ならそうじゃないとこ行けばいいじゃない」とやんわりなだめてくれるのは、テレビ神奈川の『キンシオ』である(現在再放送中)。イラストレーターのキン・シオタニがなんてことない場所に出かけては、ちょっとしたそこの歴史を知ったり喫茶店でコーヒー飲んだりお昼ご飯食べたり鉄道知識を披露したりしている。当たり前だけどどこの町にも歴史はあるんだなあ。わたしも買い物途中で道端の小さな道標とかに気が付くようになった。

キンシオ的町歩きの楽しみがあるかと思えば、「何もないのがいい」という人たちもいる。前に新聞記事で読んだのだが、ごく普通の住宅街をただ歩くらしい。隠れた名所旧跡を見つけてしまったら「負け」なんだそうだ。

ふらっと出かけた先で偶然を楽しむ、そんな小さな旅に憧れて過去に何度か試したが、どうやら自分には向いていないようだ。行き当たりばったりだけではどうにも気分が不安定になる。何か目的がないとダメみたい。

モデルで鉄道ファンの市川紗椰は、鉄道に乗って目的の駅まで行ったらそこでハンバーグを食べて帰ってくるらしい。これはちょっといいかもね。

ふらっと出かけて行った先でご飯を食べて帰ってくる。例えば地元で長年やってる喫茶店ナポリタンとか。もしくは駅前商店街で晩のおかずを一品買うとか。とりあえず目的がひとつあれば、あとはただぶらぶら歩きを楽しめそうだ。

とりあえずパスモに千円チャージして、行けるとこまで行ってみようかな。