ちくちく手縫いブームは

まだ進行中である。最近では不要になったダブルサイズのボックスシーツで風呂敷状の物をこしらえた。冬用の羽毛布団をしまう時に使おうと思っているが、実際に包めるだけの大きさなのかは確かめていない。細かい詰めがいい加減なのはいつもの事である。

ゴムの入った部分を切り取って三つ折りした縁を並縫いしただけ、胸を張って「作りました!」とも言えない代物だが、これで運針が上手くなるかも・・・という秘かな野望が実はあった。脱畳職人への道だ。

わたしは運針ができない。流れるような動きでちくちくやるのにずっと憧れていた。How To運針の動画を見ると、縫い針のお尻部分に指ぬきをあてがって二本の指で針を持つとある。指先から二、三ミリ針が覗く状態である。同じようにやってみる。どう頑張っても、指先から針が一センチ程出てしまう。指を精一杯伸ばしたら攣りそうになった。

わたしの手は小さい。指も短い。背は高い方で靴のサイズもでかいのに。

手縫い用の針で一番短いもので試しても、指の長さが足りない。手芸店のおばあさんに訴えても「慣れるしかないね」とにべもない返事だった。

だったら慣れてやろうじゃねえか、と風呂敷もどきの製作を思い立ったのだ。ダブルサイズのシーツだからね、縫っても縫っても終わりは遠い。練習にはもってこいだ。

四辺を縫い上げてどうなったかといえば、結果として畳職人の腕に磨きがかかった。細かい縫い目でひと針ひと針、結構なスピードでいけるようになったのである。運針を何度試みても、手が攣るだけでちっとも進まないし縫い目もガタガタ。かなり初期の段階で心が折れた。

もう運針の夢は捨てた。これからは胸を張って畳職人として生きていくぞ。

ともあれ、無心にちくちくやる時間は案外といいものだ。心がリセットされる気がするし、晩酌でほろ酔いになって「もう一杯いこうぜ」という時も、「いや切り上げて縫物しようや」ともうひとりのわたしが止めてくれる。

次は枕カバーを作ろうかな。まだまだ初心者街道をお散歩中です。