気がつけば定番化していた。

まず衣服。

基本は厚手の半袖白Tシャツである。これで一年通すが、冬はヒートテックを下に着て上から厚手の綿のシャツをはおる。シャツは仕事用と家用各一枚、それからニットのカーディガンとセーターも一枚ずつ。下はチノパンがこれも仕事用と家用各一本。十枚しか服を持たないらしいパリジェンヌといい勝負だと思う。向うにしてみれば引き合いに出されたくはないだろうが。

それから食事。

朝は卵とオートミール。昼は一汁一菜の和食。夜は帰りが遅いので軽めにパスタか焼きそば焼うどんの類と決まっている。

そして一週間の過ごし方。

平日は午前中家事その他をして午後から仕事、遅く帰って一杯飲みながら食事して寝る。

週末は図書館や散歩に行って近所の銭湯にのんびりつかり、夜はちょっと手の込んだ食事(グラタンとか煮込み料理とか)を作ってドラマの録画を見ながら食べる。電車に乗って出かけたり人と会ったりはほとんどない。

 

一年三百六十五日、年末年始を除けばこの繰り返し。気がついたらこんな生活になっていた。

さぞかし単調な日々と思われそうだが、これが意外とそうでもないんである。変化のない毎日だからこそ、ちょっとした変化がとても大きなものに感じられる。

ふと目をやった街路樹に新芽がつきはじめていたり、すれ違う人が季節を先取りしたファッションだったり、空き地に伸び放題だった草が刈り取られて地鎮祭の跡があったり、おやという小さな驚きが不思議と楽しい。

言い換えれば、今のわたしには「毎日わくわく」とか「常に新しい刺激を」とか、もう必要ないのかもしれない。考えてみると先鋭的で衝撃を受けるような映画や音楽、小説などにもあまり興味を持てなくなっている。

これが「老いていく」という事なのかな。そう感じる事もまた新鮮だ。