歯磨きに命をかける、

程ではないが少なくとも時間はかけている。

きっかけは手の痺れだった。それと前後して、仕事中や睡眠時に無意識に歯を食いしばっているのにも気がついて、調べてみたらどうも関係がありそうだ。

昔から歯医者は苦手である。治療自体は怖くないが、「では次は歯石を取りましょう」「次はクリーニングを」と怒涛のごとく攻められるのがどうも嫌なのだ。しかし背に腹は代えられない。折よく(というか)奥歯の詰め物が取れたから、就寝用のマウスピースの相談も兼ねて歯医者へ出向いた。

 

わたしの話を聞いた先生はすぐさま歯のレントゲン撮影を指示し、画像を見るなり抜くべき親知らずが二本ある事を指摘した。次いでマウスピース用の型を取り、その後は延々三十分以上かけて歯石取りとクリーニングが行われた。本当は一時間くらいかけたかったらしいが次の予約患者がいたのである。そして最後におまけのように詰め物を詰め直してくれた。十分もかからなかった。

 

数日して出来上がったマウスピースを取りに行ったら、再び念入りな歯石取りとクリーニング(今度は時間があったのでたっぷり)、更に磨き残しの指摘と歯磨きの死角となりやすい場所について指導された。

そして数週間後、マウスピースの調整に行った時の「まだ磨き残しがありますね」という衛生士さんの言葉が、わたしの闘志に火を点けた。

よし勝負だ。使いやすそうな歯ブラシとフロスを新たに購入し、鏡を見ながら丁寧に磨く。次の診察では「平面は磨けてますね」とお褒めの言葉をいただいた。こうなると苦手意識などとっくに吹き飛んでいる。今では予約の日が待ち遠しいくらいだ。

 

かくしてわたしは今日も鏡に向かう。一本一本丁寧に磨いたら、細いブラシで歯周ポケットと歯の間を。更にフロスで念入りに仕上げる。毎回最低でも十五分はかかる。それでもまだ合格点がでないのだ。次こそ絶対に「きれいに磨けてますね」と言わせてみせる。

決戦は今週末。