マンション七階くらいの高さの木が

ベランダから見える。朝カーテンを開けた時自然と目に入るので、枝の揺れ方で外の風の強さを想像したりする。先週は確か裸の枝ばかりだったはずだが、今朝ふと気が付いたらすっかり葉が茂っていて驚いた。毎朝見ていたはずなのに、自分の目の節穴ぶりに呆れるばかりである。

マンション七階というと相当な高さだ。木がそこまで育つにはどれくらいかかるのだろう。ひょろひょろの若木が切られも倒れもせず、ゆっくり伸びていく間、あたりはどんな風景だったのだろう。

マンションやビルが建ち並ぶのが当たり前になってしまった。再開発を名目に、最近は近所にも高層マンションがいくつもできている。販売チラシを見ると誰が買うんだという価格である。

「東京には空がない」と嘆いた高村智恵子が今の東京を見たらどう思うだろう。空どころか地面すらない現在の東京。

日本橋の空を遮る首都高が、地下を走るようになるらしい。どうせなら、今後の都市計画は中低層の建築中心の、「空が見える東京」をコンセプトにしたら・・・などと考えてしまう。

戦前の銀座を映したフィルムをみたことがある。広い道に市電が走り、人々が賑やかに行き交う町の上の空は広い。道の両脇に並ぶビルは、高いものでも七、八階建てくらいだろうか。ヨーロッパの旧市街はもっと低くて四、五階くらいのものが多いと思う。

それくらいのバランスが丁度いいんじゃないかなあ。建物のメンテナンスもしやすいし。池袋とか新宿とか渋谷とか、高層ビルの間を歩いていると息ができないような閉塞感におそわれる。すれ違う人はみんな下を向いて歩いている。

空を見上げると気分がいいんですよ。とても単純な事なんだけど。