水漬けパスタ

というのがずっと気になっていた。

平日の晩飯はたいていパスタである。箸で食うから半分に折る。時間が遅いから胃もたれしないよう50gくらい。かさ増し分の千切りジャガイモと適当な野菜をニンニクと塩で蒸し焼きにしてパスタと和え、オニオンスライス、カリカリに焼いた魚肉ソーセージをトッピングする。ナンプラーとごま油、レモン汁をちょっとかけて完成である。

ゆで時間五分の細いタイプを使っているのだが、水漬けパスタはもっと時短ができるらしいじゃない。蒸し焼きのフライパンで一緒に調理できたら楽だろうと思ったのだ。

軽く火を通した野菜の真ん中を空けてパスタを広げ、多めの水を差して蓋をして数分。残った水気を飛ばして完成である。味付けに若干改良の余地があったが、おおむね美味かった。「生パスタみたい」と聞いていたのを実際食って思ったのは、「もちもち食感の焼きそばだな」であった。

仕方ねえべよ。生パスタ食ったことねえんだからよお。

いいんである。どうせエスニック焼きそば風なの作ってんだから。市販の麺は粉末ソースがもれなくついてくるから、仕方なくパスタで代用していたのである。これでもうスーパーで葛藤せずにすむぜ。

作り方にはまだ見直すべき点がある。麺だけ先に油でカリッと焼き付けてから和えるってのはどうかな。ワンパンで簡単調理するはずだったけど。かえって手間が増えそうだけど。

スパゲッティの正しい作り方についての伊丹十三のエッセイを読んだのは中学生の頃だったろうか。日本のレストランで出されるミートソースやナポリタンを「いためうどん」と言い切る彼が、最も簡単に作れると紹介していたのは、茹であがったスパゲッティにバターを絡め、山盛りのパルメザンチーズをかけるというものだった。今ならイタリアンの店で当たり前にあるメニューだけど、初めて作った時は、こんな簡単で美味いものが!と驚いたのを覚えている。

ヨーロッパが大好きで一流志向、でも贅沢というのとも違う。自分の美意識を強く持っている人だった。だからこそ、あのような最期となったのが残念でならない。