その店の床は浅い生け簀になっていて

客は飛び石を伝って店内を移動する。テーブルと椅子もあって飲み食いできるようである。

生け簀にはウツボのような魚が泳いでいるが、チンアナゴのように直立しているものも多い。水は浅いから体がほぼ出てしまう訳だが、平然としているのは肺呼吸ができるのだろう。

そのうちの一匹がぬるりとテーブルに這い上がったのを店の人間が抱き下ろした。よく見ると鈴のついた首輪があって店の飼い猫だとわかった。何故魚に擬態しているのかは不明である。

魚はまな板にのせると体が縮んで太った鮒のようになった。淡白な味の白身で煮つけにすると美味いという。家に帰って包みを開けたら白子とネギが添えてあった。煮つけは確かに美味かった。

 

店主は愛想のいい、けれども正体の知れない感じのある男で、目が覚めてから考えるとドラマ『探偵ロマンス』で主人公の友人の郷田初之助を演じた役者だった気がする。

第一話では様々な謎が提示されて終わったから、こんな判じ物のような夢を見たのだろうか。どうせなら草刈正雄にも出てきてほしかったな。